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【仁義なきシューズ戦争】マラソンの常識を覆した「魔法の靴」の秘密に迫った!

マラソン 大会
活況なマラソンブーム。市民ランナー向けの大会も毎週開かれている

若い選手が続々と好記録を樹立し、活況に活況を増すマラソン業界。

2020年の東京五輪へ向け、男女マラソン選考となる「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」導入による参戦は増加の一途を辿っています。

出場選手が続々と高記録を叩き出している裏には、マラソン選手の命とも言うべきシューズが驚異の進化を遂げていることをご存知でしょうか?

各社メーカーがしのぎを削り、驚きのテクノロジーを搭載したシューズはさながら「魔法の靴」と呼んでも過言ではないでしょう。

今回はそんな陸王(※)さながらの、メーカー同士で繰り広げられるシューズ戦争を解説します。


※陸王とは・・・池井戸潤による小説であり、「小説すばる」で約2年間連載された、足袋作り100年の老舗が、会社の存続を賭けてランニングシューズを開発していくストーリーである。2017年にはテレビドラマ化され、大きな反響があった作品。

今、マラソン業界が熱い

マラソン トラック

マラソンシューズのテクノロジーを紹介する前に、まずは近年活躍中の注目のランナーをご紹介します。

大迫傑(おおさこ すぐる)選手

佐久長聖高校、早稲田大学とエリートコースを歩み、学生時代から陸上界を席巻してきました。

まさに理想的とも言える美しいランニングフォームと甘いマスクもあり、人気も十分です。

大学卒業後は実業団を1年経験したのち、ナイキオレゴンプロジェクトにアジア人で唯一参加を認められているプロランナーです。

これまでトラックを主戦場としてきましたが、2017年にボストンマラソンへの参加を皮切りにマラソンにも参加し、国内初参戦となった福岡国際マラソ ンで2:07:19という日本人歴代5位(当時)のタイムでMGCを獲得しました。

設楽悠太(したら ゆうた)選手

大迫と同学年の彼は、大学時代は東洋大学で、3度の箱根駅伝優勝に貢献しました。

その力は確かなものとして評価されていましたが、当時の注目度はそれほど高くありませんでした。

しかし実業団に加入してから大きく成績を伸ばし、リオオリンピックではトラックで日本代表に選ばれるほどに成長しました。

オリンピックを経て、マラソンへの挑戦に踏み切り初マラソンから1年後、東京マラソンにてマラソン日本記録を更新する2:06:10というタイムを打ち立てました。

アメリカからやってきた「魔法の靴」

魔法 アメリカ

2人の歩みは対象的ですが、実は2人共「魔法の靴」と呼ばれる靴を履いており、この靴こそマラソン業界の変革を推進しているのではないかと筆者は感じています。

日本陸上業界を変えてしまった魔法の靴は、日本製ではなくアメリカのスポーツメーカー、ナイキによるものでした。

初めて登場したのは2017年で、当時は「陸王」が放送されていた頃でしたのでご存知の方も多いのではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、度々紹介している「魔法の靴」は「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」という名前で、ナイキがこれまでのランニングシューズの概念を打ち破った1足だといえます。

常識破りの「厚底靴」

ナイキ ズームフライ
規格外の厚底は一度履くと病みつきに(写真は廉価品のズームフライ)

このシューズの特徴は靴底が厚いことで、陸王をご覧になった方はご存知の方も多いでしょうが、陸上界、マラソン界における靴底の常識は「薄い」ことでした。

薄いことで軽さを出し、長距離における足の消耗を防ぐことが狙いでした。

しかし、ナイキはこの概念に真っ向から立ち向かい、「底が厚くてクッション性がある方がランナーの足の消耗は防げる」という概念の下、新たなマラソンシューズの開発に着手していました。実際に市販品ではこの概念に沿って作られている靴も多いようです。

しかし、底が厚ければそれだけ重さが出てしまい、マラソン程の長距離になれば不利に働くというのが定説でした。

マラソン業界を大きく変えていった驚きのテクノロジー

ヴェイパーフライ4%では、「底が厚ければそれだけ重さが出てしまう」という不利な面を解決するために「ナイキXフォーム」と呼ばれる軽量な発砲ゴムでできているソールにカーボンファイバーで作られたプレートが埋め込まれています。(プレートはナイキ ズーム フライにも搭載されています)

このプレートが厚底の不利性を解消し、魔法の靴である所以になりました。

筆者も実際に廉価品のズームフライを愛用していますが、このプレートからは推進力を感じるような感覚で、簡潔に言えば足に体重をかけた瞬間に靴が反発し、足が勝手に動いていく感覚を得ることができると感じます。

最早、反則のようであるこの感覚が、マラソン業界を大きく変えていったのではないでしょうか。

ナイキXフォームが常識を超える結果を出した

ある程度のスピードで走れば、蹴り上げなくとも足を出すことが可能で、それくらい反発力を感じることができる靴がヴェイパフライ4%です。

そして、厚底の効果から足の疲労は圧倒的に軽減され、それはランニング中だけではなくランニング後に特に実感することができます。

先程紹介した設楽悠太選手はこの靴を履いて、ハーフマラソンで日本新記録を打ち立てた翌週にはフルマラソンをサブテン(2:10切り)で完走しました。

これは陸上選手でもこれまでの常識を超える結果であり、設楽選手自身が「この靴だから出来ること」と話す程でした。

魔法を使いこなすために必要なこと

ランニング 魔法 テクノロジー

一方、魔法のような反発力は誰でも使いこなせるわけではありません。

使いこなすだけの筋力が必要で、素人だと使いこなすのは難しいのが、唯一の難点といえます。

いうのも、その反発力により足が跳ねてしまうため、むしろタイムロスを生んでしまうといわれます。

そのためこの反発力を推進力へと常識破りの「厚底靴」をコントロールできる筋力は最低でも必要ではないでしょうか。

魔法を使いこなすにはランニングフォームが重要

また、この靴はとにかく底が厚いため、ヒールストライク、いわゆる踵から接地する走り方ではこの靴で走るのは難しいです。

プレートの効果も相まりカラダが前傾姿勢になってしまうため、この靴ではミッドフット(足中部での接地)やフォアフット(足前部での接地)がマストになってきます。

これは大迫選手のフォームを見ると一目瞭然で、フォアフットのフォームがこのシューズの効果を最大限に発揮しますが、フォアフットフォームの体得は簡単ではありません。

フォアフットフォームはただつま先でつけばいいものではないです。本当に難しく、間違うとアキレス腱や足底を故障するのでご注意ください。

まさに「履く人を選ぶ靴」といっても過言ではないでしょう。

箱根駅伝4連覇を支える「takumi」に詰まった最先端技術と驚きの走り心地

takumi adidas
箱根駅伝4連覇を支えたのは熟練の職人の結晶だった

これまでは、ナイキに関する魔法の靴の話に触れてまいりましたが、一方でこの靴が全てではありません。

ドラマ「陸王」でおなじみ、シューフィッターという職業もマラソンを行う上ではとても重要です。

シューフィッターの世界で第一線で活躍している日本人といえば、三村仁司さん。

かつてはアシックスのシューフィッターとして、瀬古利彦選手、宗兄弟、谷口浩美選手、高橋尚子選手、野口みずき選手等、日本の第一線で活躍する選手の足元を支えてきました。

アシックスを定年退職後、独立し「ミムラボ」を設立。2011年からアディダスとシューズ契約をし、青山学院大学のメンバーのシューズを作成されてきました。

その青山学院大学は箱根駅伝で4連覇を果たし、その強さは世間の知るところでしょう。

多くの陸上選手が愛用している「adizero takumi」シリーズ

彼等が履いてきたのが、「adizero takumi」シリーズで、アディダスの持つ最先端技術と三村氏のシューフィッターとしてのノウハウが詰まったこのシューズは、青山学院のメンバーのみならず多くの陸上選手が愛用してきました。

契約は2017年で終了したのですが、その最終版として登場したのが「adizeno takumi BOOST3」シリーズ。青山学院のメンバーと同じシューズモデルとなる「-sen-」と、かかとのクッション性にも気を使っている「-ren-」の2種類が存在します。

この靴が他と圧倒的に違うのが「軽さ」と「フィット感」と言われ、「-sen-」は170gという圧倒的な軽さは、これまで持ったことのないような靴の軽さなので、興味のある方はぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。

そして特筆すべきはこの軽さを自在に操るための「フィット感」で、三村氏の製作する靴の特徴として踵がしっかりしており、この靴ならではの踵からくる フィット感を体験することができます。

軽さとフィット感から、まるで素足で走っているような感覚を味わえるほどと表現される方もいるほどです。

adidasの最先端技術「BOOST」

boost adidas
厚底靴に負けず劣らずのクッションと反発性を持つ「BOOST」

その一方で、adidasが持つ最先端技術である「BOOST」が先端部に搭載されています。この「BOOST」は、ただのクッションにも関わらず、しっかりとした反発力を得ることができます。

数年前まで農業に従事していたデニス・キプルト・キメットがマラソンの世界新記録を記録した際に、この「BOOST」を搭載した「Adizero Japan Boost 2」を履いていたことからも有名です。

全体に配置すると厚さと重さが出てしまうこともあり、adizero takumi BOOST3シリーズではあえて先端部のみに配置されています。

一方で、この靴も「履く人を選ぶ靴」という側面があります。

この靴に適しているのは、足首が柔らかいことで、これは三村氏の足首が柔らかい選手がマラソンに適するという思想にも通じています。

全体的にソールは固さも感じ、特に「-sen-」の踵の部分は軽量化のためクッションがなく硬さもあるので、普段厚底の靴を履いてジョギングをする人には正直合わないかもしれません。

職人の新たな挑戦

シューフィッターの第一人者である三村氏ですが、2018年からニューバランスと契約、早速新作の開発に乗り出し、2018年11月を目処に新たなシューズが販売されるそうです。

これからマラソンに本格的に挑戦する方は、こちらの動向もチェックしてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、陸上界では早くもニューバランスと三村氏の共同開発した靴を履いている選手もいるので、adidasに残る選手と、重ねて注目して見るのも面白いですね。

ランニングシューズでラン生活を変化させよう

マラソン 習慣

今回は筆者が実際にマラソンやランニングを通して感じた、ランニングシューズをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

陸王さながらのシューズ戦争のきっかけは外国メーカーによるもので、この事実を知った筆者は当時とても驚きました。

もちろん、日本メーカーも負けてはいません。2018年現在の箱根駅伝のシューズシェアは2位にアシックス、4位にミズノという順番です。(EKIDEN News調べ)

かつての名ランナーと合わせて日本のシューズメーカーについては、今後機会があればぜひ紹介したいと思います。

遂に日本の陸上界も動かしてしまった外国メーカーに日本メーカーはどのように対抗するのか、今後も目が離せませんね。

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